力学① 力・つり合い・反力
対象講義: 養成アプローチ力学 第1〜5回、BASIC講義(反力編)、基礎講座第1回。静定構造物の反力計算は2級建築士で毎年のように出る最重要分野です。解き方は完全に型が決まっているので、手順を体に入れるのが最短です。
学び方の全体像
この単元は「力の表し方 → つり合い条件 → 支点と反力 → 具体的な梁の反力計算」の順に積み上げる構造です。後半の計算問題でつまずいたら、ほぼ必ず「つり合い式の符号」か「モーメントの回転方向」のどちらかが原因です。間違えたら式ではなく図を描き直すこと。
1. 力の三要素と作用線
力は 大きさ・作用点・方向(向き) の3つで決まるベクトルです。ここで試験に効くのは「作用線」の性質:
力は作用線上のどこに移しても物体への効果は変わらない。⇒ モーメント計算で「力を滑らせて直角にする」技が使える。
2. 力のモーメントと偶力
M = P × l (力 × 回転中心から作用線への垂距離)
回転方向の符号を最初に決めることが全ての起点です。講義の流儀は「反時計回りを ⊕ とする」例が多いですが、自分で決めれば何でもOK。ただし決めたら最後まで変えない。
偶力は「同じ大きさ・逆向き・作用線がずれた2力」の組。つり合いを打ち消さない回転効果だけが残り、そのモーメントは M = P × (2力間の距離) でどこを中心に取っても同じ値になります。
偶力のモーメントは「どの点まわりでも同じ」。計算点の取り方で答案が変わるのは符号ミスです。偶力が出たら P×距離 で一発処理。
3. 力の合成と分解
- 直線上の力: 向きが同じなら足す、逆なら引く。符号付きで考える
- 一点に作用する2力: 平行四辺形の対角線が合力
- 分解: 斜めの力はX成分(Pcosθ)とY成分(Psinθ)に分けてからつり合い式に入れる
sin/cos の取り違え防止: θを挟む側がcos。図に直角三角形を描いて「θの隣辺/対辺」を確認してから式に入れる。
2力の合成(平行四辺形の法則)
1点に作用する2力は、2力を隣接2辺とする平行四辺形の対角線が合力。同一直線上なら向きを考えて足し引きするだけです。
偶力
偶力は「同じ大きさ・逆向き・ずれた2力」。合力はゼロだが回転だけが残り、そのモーメントはP×2力間距離で、どの点まわりでも同じ値です。
4. 荷重の3タイプ
| 種類 | 単位 | 合力に直すとき |
|---|---|---|
| 集中荷重 P | kN | そのまま作用点に置く |
| 等分布荷重 w | kN/m | w × 作用長さ → 分布区間の中央に集中荷重として置き換える |
| 三角形分布 | kN/m | w × 長さ × 1/2 → 大きい側から 1/3 の位置に置く |
等分布荷重は「合力に置き換えてからつり合い式を立てる」。合力の作用位置を端に置くのが最頻出ミス。必ず中央(三角形は1/3点)。
三角形分布荷重も同じ要領。合力は「面積」、作用位置は「形心」= 大きい側から1/3です。
5. 支点の種類と反力の数
判定の早見: 静定 = 反力3成分。単純梁(ピン+ローラー=2+1)、片持ち梁(固定端=3)、静定ラーメン(ピン+ローラー)は全部3成分だからつり合い式3本で解ける。4成分以上(両端ピン等)は不静定で出題されない。
6. 反力計算の解き方ステップ(単純梁)
- 支点を A・B と名前付け、反力を仮定の向きで置く(普通はVA・VBを上向き、HAを右向き)
- ΣX=0 → HA=0(鉛直荷重のみなら必ず0)
- どちらかの支点まわりで ΣM=0 を立てて片方の鉛直反力を求める
- ΣY=0 でもう片方を求める
- 検算: 求めた両反力で、逆側支点まわりのΣMが0になるか確認
例: スパン4m、中央2mの位置から右端までではなく、Aから2mに8kNの集中荷重
ΣMA=0: VB×4 − 8×2 = 0 → VB = 4kN
ΣY=0: VA + VB − 8 = 0 → VA = 4kN
ΣMA=0: VB×4 − 8×2 = 0 → VB = 4kN
ΣY=0: VA + VB − 8 = 0 → VA = 4kN
7. 片持ち梁の反力
固定端には VA・HA・MA(モーメント反力) の3つが生じる。ΣY、ΣXに加えて固定端まわりのΣM=0でMAを求める。
例: 長さ2m、先端に3kN → VA=3kN、MA = 3×2 = 6kN·m(荷重と逆向き)
片持ち梁は「応力を求めるなら自由端側から切る」のが鉄則(→力学②)。反力自体は固定端で3成分全部出すだけ。
解答で反力が負になったら「仮定向きが逆」という意味。矢印を書き直して絶対値を答える。−3kNのまま提出しない。
8. 静定ラーメンの反力
門型ラーメン(2本の柱+梁、片側ピン・片側ローラー)も未知数は3。単純梁と同じ3式で解けますが、水平荷重があるとHAが0にならない点だけ注意。手順は:
- ΣX=0 → HA を先に求める(水平荷重がある問題はここが得点源)
- ピン支点まわり ΣM=0 → もう片方の鉛直反力
- ΣY=0 → 残りの鉛直反力
柱の途中に水平荷重が来る問題は、その荷重×支点までの高さがモーメント項に入る。「荷重の位置(高さ)」を寸法線で確認する癖をつける。
ΣX=0: HA = P / ΣMA=0: VB×スパン − P×h = 0 → VB = P·h/L(下向きのことも) / ΣY=0: VA+VB=0
確認問題
Q1. スパン6mの単純梁のAから2mに12kN。VBは?
ΣMA=0: VB×6 − 12×2 = 0 → VB = 4kN。荷重が中央より左ならVB(遠い側)の方が小さくなる、という直感と一致するか確認する癖を。
Q2. 等分布荷重 w=4kN/m が全長4mに作用する単純梁。合力と作用位置は?
合力 4×4=16kN、分布区間の中央(両端から2m)。VA=VB=8kN。
Q3. 片持ち梁の固定端に生じる反力成分の数は?
3つ(VA・HA・MA)。「固定端は回転も拘束する」=モーメント反力が出る点がポイント。